片口に心惹かれてしまうってことないですか?
これは、ぼくたちの血の中にながれている、
和の美意識に由来しているようですよ。
一口にいうと、左右対称より、
少しだけ違っているほうが、
どこかしっくりするという特有の感覚があるようです。
それに対して、中国から欧米までほとんどの文化の様式では、
シンメトリー(対称)が基準です。
真ん中に階段があって左右対称配置するホール。
寝台の左右にサイドテーブル。
城でも宮殿でも、大まかな外観はまず左右対称。
こんな大きな空間から、
デーブルの上まで、シンメトリーが基本ですね。
比べて、和の文化は、
大陸の影響で建てられた天平・奈良あたりまでは、
左右対称だった伽藍配置も、
平安・鎌倉と時代が下るに従って緩んでいき、
官ではなく民に至っては、
建物に限らず、あらゆる物に非対称が多くなっていきます。
そんな歴史のなかで自然にぼくらの血に刷り込まれた感性が、
非対称へ心地よさを感じる文化だと思います。
器では、片口はその代表です。
置くときに、ほとんど迷わず自然と口が左にいくでしょ。
確かに、左利きを生活の中で補正されるので、
ほとんどの方が右手で片口を持ち、
左側に注ぐので、そう置いた方が、
持ちかえる必要がないので、
能率的なのですが、そればかりではないようです。
お頭付きの魚をお皿に盛りつけるときも、
頭(口)が左ですよね。
そんな感じで、約束としても、
注ぎ口は左にするのは、急須も、汁注ぎも同じです。
余談ですが、左右があるのですから、器に表裏が出来て来ます。
器の正面に当たる部分を客付きと言います。
向付けや、小鉢のように、
一人ずつの器として、片口を意識するなら、
口を左にして、手前側が客付きという、正面です。
さて、片口の話にもどして、
そんな心惹かれる形の片口は、
注げるという使い勝手に加えて、盛り映えもします。
これまた、左右対称の器にない美しさを感じてしまうわけですね。

一輪一枝の花を添えても、
花器に活けるのとは違った、
広がり風情があり、心和みます。
氷を入れてアイスペールに、
冷えて露を浮かべた土肌はしっとりとなじむ。
グラスに氷を入れるだけでなく、
溶けた水は水割りにも、程よく。

もちろん、お気に入りの酒を注ぎいれ、
酒の色を楽しみ、潤んだ土肌を愛で、
酒で集めた光を受けた見込みを覗き、
するすると注ぐ流れと音を聴き・・・・。
肴になる酒器でもあります。
と、実はぼくが片口大好き人間なだけかな・・・・。
甘庵
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