冷菜をより涼しげに演出する器として良く使われます。
アイスクリームやシャーベットや冷菓も、
当たり前のようにガラスの器に盛られます。
でもこれって、じつはとても日本的なガラスの器の使い方みたいですよ。
たとえば夏に、フランス料理のコースを食べたとして、
冷菜やアイスクリームなどのデザートなども、
やきものの器に盛り付けられていることが普通です。
きっと、私たちほどにはガラスの器に清涼感を感じないのでしょうか。
だから、ガラスを特別に夏の器として、
使おうとは思わないのでしょうね。

ぼくらはガラスを夏の器と、ごく自然に感じてるけど、
これは、とても日本的な、器の選びのセンスみたいですよ。
ふたつのとても素敵なセンスです。
一つにはガラスの器に、夏の季節を割り当てたセンス。
二つ目に高温多湿の日本の夏を、ガラスの器で、
少しでも過ごしやすくしようとする工夫を、
粋に楽しむセンス。
この二つのセンスからガラスは、
夏の器の代表のようになりました。
夏の器として選ばれた一番の理由は、
ガラスの器だけが持つ透明感でしょう。
この透明感から水や氷を連想したり、
清涼感を感じるのも日本的な感覚なのでしょうね。
ガラスは高温で溶けて、ドロドロの液体から、
だんだんと粘性を増していって、
徐々に固まってしまう特性を活かして、作られます。
この液体から形作られるガラスの器に、
水や氷を感じるのは、いたって自然なことでしょう。
日本でガラスが、量産されるようになったのは、
明治の時代です。
まだまだ、庶民にとっては、贅沢だったとは思いますが、
それでもすぐに、かき氷用の器が出来ています。
水色や、ピンクや、色とりどりの、
アンティーク屋さんで見かけるあれです。
カップ部分の下にステム(脚)のある高坏(たかつき)型で、
作り出した職人の心意気が感じられる、堂々とした姿の器です。
冷たさが伝わりやすいので器全体につく水滴や、
中のシロップが透けて見える様子はいかにも涼しげで、
器も御馳走にしてしまうのが日本らしさですね。
器以外ですが、吹きガラスの風鈴も夏のものですね。
たとえ、なまぬるい微風でも、澄んだ音を楽しむことで、
涼やかな風を連想することに、すり替えてしまう。
日本の夏の暑さを乗り切ろうとする、
素晴らしい庶民のセンスと知恵だと思いませんか。
だって、壊れにくさなら、鋳物(いもの)の風鈴の方がずっと丈夫なのに、
はかないくらいの薄さに涼感を覚えて、ガラスの風鈴を選ぶところは、
いかにも日本的ですよ。

今の私たちの住まいは、夏にはクーラーが効き、
冬には暖房で暖められています。
ずいぶんと、蒸し暑さも、寒さでも、楽に暮らせるすようになりました。
その分、季節感のない暮らしぶりになって来ているかもしれません。
旬がわからくなった、季節感の薄い食材を食べ、
身の回りの風景からも、季節感が減る一方の日本だからこそ、
暮らしの中では先人達の感性を引き継ぎ、新しい発想や工夫を、
取り入れたい物です。

夏の器として、ガラスをもっと自由に楽しみましょう。
荻窪「銀花」は金曜日から今度はガラス屋になります。
澄んだ素地の綺麗な荒川尚也さんの個展がはじまります。
そこでしばらくは、荒川さんの作品を含めてガラスのお話しを、
させていただきます。
閑庵
